ウインクについての考察
客用のテーブルの上に見慣れない雑誌が置いてあった。 多分、ハボックかブレタのだろう。 けしからん奴らだ。
後で、きつく言っておかなければならない。 ここは、あくまで私の執務室なのだから。
「たっいさー!!」
勢いよく開かれた扉。 もう驚いてやるものか。
「何度も言っているだろう。ノックをしなさい。ノックを。」
「オレ達の関係にそんなもん必要ねぇだろう。年中無礼講!」 「親しき仲にも…と言う言葉を知らんのか」
私は、雑誌を自分の机に音を立てて置いた。
「大佐も、そういう雑誌見るんだ。」
「いや、これは誰かが忘れていったらしい。」 「へぇ。どうせしょーい辺りだろうから、返しておこうか?」
「いや、いい。ちょっときつくしかってやらねばならんのでな。」 「へぇ。あ、これ報告書。」
と、既に用意された報告書を渡してきた。 相変わらず、タイミングと言うか、そういうものが合わない。
いや、それももう慣れたか。
「ねぇ、確認終わるまで、それ見てていい?」 「構わんぞ。」
彼は、客用のソファでくつろいでいる。 まぁ、いつもの事だ。 私はといえば、あくせくと読みづらい文字を追っている。
「何をしているんだ?」 「ウインク。」 「なぜしているんだ?」
「なんか、ウインクしてる写真がいっぱいだったから、つい。」
身を乗り出して覘いてみると、ウインク特集なるものをやっていた。
見たことのある女優群が一斉にこちらに向かってウインクをしている。
「君はウインクが上手だね。」
「はぁ?これに上手いも下手もあんのか?」 「すくなくても、私は不得手だね。」 「へぇ。やってみて。」 「だから、不得手だと。」
彼は雑誌を放り投げて、机に乗っかかった。 そして、誘惑してるのかと思うくらいに、パチパチとウインクした。
「早く、やってみろよ。」
睫毛が長い。 金色の睫毛が瞬くたびにキラキラと光った。 私は観念した。
こういう彼にとても弱い。 猫っ可愛がりだということはよく知っている。 それを知っているのかいないのか、実にこういうときの彼は上手かった。
「いいが、笑うなよ。」
ウインクをした私は、彼に大笑いされた事は言うまでもない。
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