美味しければ、それでよし。


食事に行くときは、アルはお留守番。
食事って言っても、お偉い方の会食ってヤツに参加してみたり。
そんなかんじ。
もちろん、赤いコートもお留守番。
いつまでたっても着慣れないジャケットたち、大佐の家に置いてある。
本当は、軍部でも良いのだろうが、なんとなく。
あいつの家に、オレのものがあるってところが良い。
会食前に大佐の家に行く理由だって出来る。
(自分がウザイ。でも、しょうがない。)


「たいさ〜!」
「ちょっと、待ちなさい。」


オレは、結びきれないネクタイを首からぶら下げていた。
結べる事は結べるが、不恰好なのだ。
不恰好だなと自分でも思うので、諦めた。
練習しても、次の時には忘れていたりするからびっくりする。
だから、今はもう諦めた。


全部で5〜6着あるものを着まわしている。
頻度的にはかなり低いが、会う人間が人間なので、そうにはいかない。
軍部の女性陣が選んだらしい。
ホークアイ中尉を筆頭に、カタログを覗いて黄色い声を上げているのが眼に浮かぶが、最終的に決めたのは大佐だろう。
大佐趣味っぽい気がする。
本人にはまだ、確認はしていないが無駄な確信はある。
だって、なんか、あれだ。
(なんとなく、趣味ってわかるだろ?)


「すまん。」
「あ、ジャケット新しい?」
「ああ、先日衝動買いしてしまってね。」
「へぇ、大佐でもそういうことするんだ。」
「あまりしないがね。」
「…。」
「似合ってるとか、似合ってないとか、言いなさい。照れるから。」


いや、照れるのはオレの方だって。
なんか、いつもと違う感じ。
抱きしめられたら、真新しい布の匂いとかすると思うだけで、心臓が高鳴った。
いやいや、オレは変態か?


「に、あってるんじゃ、ね?」


あ、でも、ばれてる。
オレ、今、顔…真っ赤だ。


「それはよかった。」


大佐も照れてる。


でも、まったりとする時間もなく、首を絞められるギャグを混ぜつつ、あわただしく用意を済ませた。


「君がいるお陰で、陰鬱な会食が嫌ではなくなっているんだよ。」


向かう車の中で、絶対に大佐は言う。
それほどまでに会食が嫌なのだろうか。
確かに、どれだけの勲章を身に纏ったお偉い方が、ニヒルな顔をして大佐に話しかけるのかを考えると、ゾッとしないところがある。
言われる台詞なんて、お決まりで何度となく同じ台詞を返すのを考えると、帰りたくもなる。


「オレは、美味しいものが食べれるから文句は言わないよ。」


勿論、オレにも賛辞ヨロシクな嫌味が付いてくる。
消化不良を起こしそうなそれなどは、若さでカバー。
年寄り大佐は、若くないから無理か。


「君はいいな。」


大人の顔して笑う大佐も嫌いじゃない。


大佐だって、それなりの楽しみは見出しているはずだ。
オレが不慣れな敬語を使う様を見て、ほくそ笑んだり。
オレを着せ替え人形のように、自分の趣味で着飾ったり。
会食の後は、オレを見事にお持ち帰りだってするんだ。
(着替えは大佐の家に置いてあるので、仕方がないといえば仕方がないが…)


「実は、あんた、会食嫌いじゃねぇだろ。」
「良いこともあるからね。」


ほらな。







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