ご当地直産
「鋼運送で〜す。」
それはいつものようにノックもしないで勢いよく入ってきた。 何の趣向か、運送屋と名乗って…。
「鋼の。ノックをし 「お届けモノです。はんこをください。」 「ああ。」
私は思わず、印鑑を探した。
「違うよ。そんなものはいらないよ。」
歌うような彼は、いつもより陽気だ。 陽気? にこにこ笑っている。
「はがねの?」
「はんこはここに。お届けモノは、オ・レ」
唇を人差し指で押さえて、上目遣いでこちらを伺う。
そして、私の首に手を回し、おもいっきり唇を重ねてきた。 このまま、流されてしまっても良かったが、どこかおかしい。
まず、彼がこういう態度を取る事がおかしい。
「お届け完了ー!」
顔はとろんとしていて、何処かしら赤い。
いや、これは照れている赤さとかではちがう。
「鋼の?何を飲んだ?」 「んー?なんかのんだ?変な味のジュースは飲んだよ。」
「それだ!」
アルフォンス君は何をしているんだと訝しんだが、そういえば彼はどこに行ったのだろうか。
「鋼の?」 「なぁに?」
ああ、なんてかわいらしいんだ。 小首をかしげて上目遣い。
普段の鋼からは考えられない。 いやいや、そんなことを今は…。
「アルフォンス君は何処にいるんだ?」 「アル?」
「一緒に来たのであろう?」 「一緒に?」
室内に響き渡るノックの音に、私は驚いてしまった。
「失礼しま…、エドワード君、ここにいたのね。」 「ちゅーい?」 「今、アルフォンス君から捜索願の電話が来てたのよ。」
とどのつまりは、突然鋼のが失踪したと言う事だ。 彼は、泥酔。 只今、仮眠室で夢の中だ。
彼が酔った後、無意識で会いたいと感じたのは、私だったことがうれしく思えた。
書類を仮眠室に持ち込んで、片付けながら、キラキラ光る金糸と、幼児のような幸せそうな顔で夢を見る彼を見た。
事の仔細は彼が起きてからでも遅くない。 その頃には、彼の弟も付くはずだ。
中尉と彼の弟の雷が落ちる前の、この静かなときをしっかり味わえば良いと、やわらかい手入れをしていない髪をなでた。
きっと、ご当地果実酒でも飲まされたのだろうと、口の中に残る果物の甘味を堪能した。
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