2人は仲良し


「君は身体が元に戻ったら何がしたい?」
時刻は夕刻。
窓辺に赤い影がうっすらとできている。
男は鎧に話しかける。
傍目から見たら奇妙な光景だが、ここではそれは人にするそれと同意だ。
「そうですね。まずは、ウィンリィのアップルパイが食べたいです。」
恐恐しい鎧からは裏腹に、やさしい少年の声が響く。
男はその応えに至極満足げにうなづいた。
「それから、医者になりたいです。」
「医者?」
「まだ、兄にも言っていませんが。」
鎧は、ソファの上で寝る少年の方を一瞥した。
そして、男に向き直る。
「どうしてまた。」
「そうですね。獣医とかでも良いと思ったんです。動物好きなんで。でも、今までしてきたことに対する贖罪といいますか、今までしてもらってきたことに対する感謝といいますか。」
「そうか。」
鎧の表情を男は読み取ることはできないが、それでも、照れくさそうに話していると声色から伺えた。
男は真摯な瞳でそれを認め、軽く微笑んだ。


「大佐は、僕たちが元の身体に戻ったら、何がしたいですか?」
男はその質問に唖然とした。
考えたことは無きにしも非ずだが、改めて問われると応えにくい節があった。
「そうだな。君たちを連れて、食事に行きたいな。3人でなんて、とても素敵だとは思わないかい?」
「いいですね。」
鎧はとてもうれしそうな穏やかな声で相槌を打った。
「それから、どうしようか。いっぱい君たちを甘やかしたいね。」
「甘やかす?」
「そうだよ。君たちがうんと我がままになるくらい。」
「自信がないな。」
「私たちがうんと、困るくらい我がままになってほしい。」
「努力します。」
そして、2人で声を立てて笑った。


その声に少年は目を覚ましたが、訳がわからない様子だ。
仲間はずれにされたような疎外感を感じつつ、大きくあくびをして、おはようと乾いた口で挨拶した。


「お前と大佐って、仲いいよな。」
「何?やきもち?」
兄弟は、慣れ親しんだ好奇の目にさらされながら、宿に戻った。
「馬鹿言え。」
「元に戻ったら何がしたいって話をしたんだよ。」
「へぇ。オレは、とりあえず、どうするかな?」
少年は腕組みをして、大いに悩んでいる。
「僕は、色々と食べたいね。寝たい。触りたい。」
「そうだな、アルをまず抱きしめる。それから、お帰りって言ってみる。」
「じゃあ、ボクも兄さんを抱きしめて、ただいまって言ってみる。」
そうして、兄弟は笑いあった。







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