蒼の軌跡


「特別な手紙を書くとき専用かな?」


白い、綺麗な羽根ペン。
青いインクが先に染みを作っている。
細い骨ばった手がそれを軽く握り、走らせる。
それを見る少年の心は、穏やかではなかった。


「それは、特別な手紙?」


男は少年を見上げると、ひとつ微笑んでまたそれを走らせた。



「そうだね。特別な手紙だよ。」



机の前に立つ少年の目には、男の書く文字は目に入ってはいない。
ただ、ひたすら動く手と指と白い羽根を目で追っていた。
読めるはずの文字が読めなくなっているのかもしれない。



「気になるかね?」



男は視線をインクに向けると、蒼の泉にそれを浸した。



「なんねぇよ。」



男は見えないように笑うと、再びそれを走らせた。



「特別な手紙は、特別な相手に出すだけとは限らない。」



男はそういうと、顔を上げた。
少年は、赤くなった顔を隠そうともせずに、ただ、蒼い軌跡を目で追いかけた。







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