って、オイ。この状況…おかしいだろ。


不意を付かれたのと、ベッドが思いのほかふかふかで、力が入らない。
口が自由になった瞬間に罵声を浴びせる。
「触っていいと、言ったではないか。」
「それは、オートメイルの話。あんた、なんなんだよ。」
「流石に童貞ではありませんが、殺す必要の無いえさが目の前に…」
まじめな顔をしておかしなことを言う。
変だ…
こいつ変だ…
「可哀想なことに、殺されてたんだよね。彼女たち。知ったのは5年位前だけど。」
驚く顔を確認すると続ける。
「若いし、したいじゃないか。」
暴君だ。
「それから、5年ご無沙汰です。お願いします。」
「おれ、男だけど…」
「知ってるが。」
「選定理由は?」
「顔。容姿。8割。」
ここぞというキメ顔。後光というか、キラキラしたものが飛んでいるように見える。
ショック。
正直に言う。先日のアホ面はまだまだの出来だった。今の顔は至上最高のアホ面だ。口をパクパクと金魚のように。冷や汗が出る。血の気が引く。
あれだ。顔面蒼白のアホ面。
「屈強な人間ばかりでね。女性もいたが、好みのタイプがいなかったんだよ。この際、男でもと思ったら、意外に可愛い顔をしているのがいたし、身長もさばを読んでいたみたいだしね。」
正直ショック。
身長サバ読んでてすみません!!
かなりショック。
お願いされても困りますと、かなり狼狽。 「オレが、男は嫌です。初めての相手は決めてあります。片思いですが、相手は女の子です。」
「彼女は君の弟が好きなんだろう?弟もそうだと調書にはあったよ。相思相愛だ君には出番がない。」
さらにショック。
そんなこと知らなかった…。
馴染みの技師装具屋。幼馴染。オレの初恋…こんな形で失恋するなんて思わなかった。
「失恋の痛手は新しい恋で癒せばいいんだよ。」
と、また顔が重なる。
もう、どうだっていい。
あまりのショックで、その後の記憶がない。


ファーストキス…オレの貞操…さようなら。
守る価値あるの?こんな奴。


起きた時にはしっかりパジャマを着込んでいた。
体も大丈夫。
時計は…8時まであと5分あった。
残り4分ジャストでまた目を閉じた。
爆弾処理には必須。5時間くらいまでは軽くコンマ1秒たりとも遅れることなく数えられる。
身に起こった色々な事が頭の中をぐるぐるしていた。
4分の二度寝…。無謀だったのは言うまでもない。
失恋…そして男に…ファーストキスを奪われ…オレの夢が…いつかアイツの身長を抜かした時に告白して、それから…。
4分ジャスト目を開ける。


いつの間にか寝返りを打っていたのか、奴の顔が目の前に…。無駄に目が合う。いたたまれない気分になる。視線を落とせば、ファーストキスを奪われた…く…ちが…
「おはようございます。」
やどたどしく口を開く。
「おはよう。」
どこか不機嫌だ。
体を起こしてベッドから出ようとする。が、襟をつかまれてまた、ベッドへ舞い戻った。
さっきとは違い、顔が数センチと離れていない。
「キス一つで、気絶とはそんなに私のキスはうまかったか?」
キスで気絶?違う、あまりにもショックなことが起こりすぎての気絶だ。
「現実逃避だと思います。」
視線をそらす。
「寝てる君とするのも良かったが、初めてでそれはダメだと思ってね。」
「寝てても、起きてても、男とはしませんって。」


「ほう。」
何かをたくらんだ顔になる。悪い仕事いっぱいしてるから命を狙われているのかと納得した。
「それでは、契約内容を変更といこ
「は??」
「君は既に契約を交わしているし、今から契約の一方的な破棄の違約についても決めてしまおう。」
「は??」
「そうだな。一方的な破棄についてだが、8000万センズの違約金とでもしよう。これが大事だ。私が抱きたい時に抱きたいだけ君を抱く。」
「!!!!!?????」
驚いているうちに、奴は身支度を整えていく。
「君は確かにBGだが、この家の設備でこの10年間どうにか凌いでこれた。これからも、最新鋭の設備を常時入れていくつもりなので、本来なら君は必要ない。が、周りがうるさいのでおいておく必要がある。君の1番の仕事はBGよりも私の性欲処理の相手だ!!!!」


おかーさーん、ここに変体がいるよーーーー!!!!
たすけて、お父さんーー!!
リザねぇ、コレを撃ち殺してください!!!!!
ああ、アルの言うとおり、断ればよかった。
こんなところ、面接に来なければよかった。
後悔が襲う。


「第一君は私のBGだ。主人の寝首を欠くことはないだろう?それに、契約内容に寝所は一緒と書いてある。誰も君が同性の私に抱かれてよがり狂っているなんて気づかない。」
ワイシャツの白が、朝日を浴びてまぶしく感じた。
目がチカチカする原因はコレだけではないだろうけれど、これは夢なのだと思った。
だって、ありえないじゃん?
オレがよがり狂うとか、こいつに抱かれるとか、平気で言ってる変体が目の前にいるんだぜ。コレは夢だ。実にリアルな夢だ。
180度体を回転させ、枕に頭をうずめる。
そういえば、愛用の枕はどこにやっただろうか。


「ここでの君のコードネームは金猫だ。普段はエドと呼ぼう。問題は?」
「ないです。」
憂鬱だ。実に憂鬱だ。







第2話
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