金猫とは私も粋な名前を付けたものだ。
彼を初めて見たのは、私の持ち会社に仕掛けられた爆弾を処理した処理班の情報を見たときだった。
半年前。
小さい少女が大男に囲まれて指示している写真。
金色の髪が印象的だった。
実際に見ると蜂蜜の甘い香りがしそうな金色で、瞳までその色だったことには正直驚いて、目を奪われた。
どうにか処理班の情報を入手したはいいが、その金髪の少女の情報は一向に掴めずじまい。
マスタングの情報網を駆使して情報を集めたが、それでもわからなかった。
当の処理班も大金を積むと言ったが、わからないの一点張り。
最終手段はBGの公募。業界隅々まで行き渡るように公募した。
見事に1600通の中に彼女がいたことに驚いたし、ましてや、男だったとは思いもしなかった。
該当者無しということで、この滑稽な戯れをなかったものにしてしまおうと思ったが、せっかくなので、1度見てみることにしたのだ。
敷地内に入ったところからカメラ数台で監視した。
あまりにもラフというか、まぁ、2次試験と偽ってるのでこんなものかとモニターに食い入った。
流石に、着替えをしているところは見ないことにした。
自分は男娼の趣味があったのかと焦りはしたが、無駄に体力を浪費しないためにもそうした。
少女のような顔は、後に一つに束ねられた髪によって更に幼く、少女のようにみせていた。
毒物は入っていないよと独り寂しく突っ込んだり、彼は見ていて飽きなかった。
気がつけば1時間。
これ以上待たせては悪いと思い、ホログラムの準備をした部屋に通した。
会って抱きしめたかったし、会いたかったと言いたかったが、なんせ、命を狙われる身。誰であろうとやすやすと姿を見せるわけにはいかなかった。
彼との会話は存外面白かった。
利発な返答に、相性の良い相打ち。
なにより、くるくる変わる表情には正直ときめいた。
生まれて初めてだ。
この屋敷からほとんど出ることも無く過ごしていた私は、初めての感情に多少戸惑ったが、彼に恋をしてしまったのだと理解した。
決して、男娼の趣味があるわけではない!
翌日、執事の制止にもかかわらず、玄関まで迎え出た。
本当は、迎えの車に乗って彼を迎えに行きたかった。
前日と同様なラフな格好だが、よそ行きの雰囲気があった。
緊張した面持ちがまた、可愛かった。
ん?
男に向けて可愛いというのは失礼か…しかし、可愛いのだ。仕方がない。
あまりにもうれしくて、(年甲斐がないが)しかたがなかったのだ。
驚いた顔も、アホ面(失敬)も全てが可愛いと思えた。
何度も言うが、私は断じて男娼の趣味などない。
と、言い切れなかったのは枕を抱えて入ってきた時だ。
何ですか?あの可愛い生き物は。枕ですか?素敵なオプションですね。
普段は一つに纏められ後になびいている髪が下ろされ、雰囲気が違う。
動揺を隠すためにお使いを頼んだ。
なれない敬語が可愛かった。
下半身が熱くなるのを感じた。5年分の蓄積物が訴えかけてきた。
平静を装うために、小細工をする。
話のネタに契約の話でもと、契約書に初めて目を通した。拷問か?これは。
相手にもだが、私にもだ。
この10年間独り悠々自適に暮らしてきたのだ。こんな24時間体制の監視は正直困った。
しかし、”寝所も共に”という項目は光って見えた。
ありがとうございます。お父様。初めてあなたに感謝します。
よたよたとバランス悪く歩く姿も可愛かった。
余裕が無かったため、一気にまくし立てるようにして早口で話してしまったり、踏んだり蹴ったりだ。
人との交流が下手で申し訳ない。と心の中であやまった。
呆けた顔が可愛いと見とれてしまうと、先ほど冷ました下半身が活動を始めてしまったため、本日2度目のシャワーを浴びた。
というか、これがいけなかったのか?ドライヤーは頭ではなくまたもや下半身に熱を持たせてしまった。
盛り過ぎ…。仕方がない。5年間の禁欲生活は本当に辛かった。
初日からというのはダメだという自制心はもはや無く、気がつけば唇を重ね押し倒していた。
そして、「お願いします。」と懇願しているし…。初めて人にお願いと言いました。
失恋させて、そのショックに付け入ろうとしている。最低だ。私。
可愛かった。にじんだ目がキラキラしてるのがキレイで、金の瞳の輝きが一層増して…。
そして、再度唇を重ねていた。
抵抗が弱まっていくのを感じた。
抱かれる気になったのかと唇を離すと、最大の抵抗がそこにあった。
黒猫の用心棒
教訓2〜骨よりは身のほうが好きです。あ、でも、骨も好きです。〜
昨晩は驚きに下半身が納まりはしたが、それもつかの間、寝顔・寝息に1睡もできなかった。2度ほどトイレに行き2度ほど抜いた。
寂しいかな我が人生。
朝から膨大な量の書類に目を通し、昼前には会議(といっても、中継)。午後からは会談(国際テレビ電話)一歩も屋敷の外へ出ることなく今日も1日が終わった。
時刻は9時。
いつもはシャワーをこのまま浴びて、もう一仕事をするが、今日は違う。
いつもの倍の速さで仕事を終えた。
色々と準備があるのだ。
出会って3日目、気が早いようだが限界だった。
「今日は抱くからな。」
と独り部屋で意気込んでみる。
「ふざけるな。誰が抱かれるか!」
不躾にもノックもせずに入ってくる彼が無性に愛しく思えた。そんなところも可愛いい。
私は彼に骨抜きなのだと自覚した。
手には皿に盛られたサンドイッチとコーヒー。
持っている彼といえば、顔をほのかに赤らめている。不機嫌さ最高潮のような顔つきだが、どこかはにかんでいるようにも見える。目の錯覚ではないことを祈りたい。
「シグさんが、食わせろって。」
机の上に乗せようとするが、そこは書類の山。片付けようとしていたところだが、少々意地悪をすることにした。
「今、整理中だったんだが…、片付けるまで持って…。コーヒーが冷めるのは嫌だな。食べるから、じっとしていてくれ。」
昨日の件から言って、彼はこういうのになれていないらしい。揺らさないように集中するさまも可愛い。あまり長くじっとさせるのも可哀想なので、手早く食した。
細かく波打つコーヒーを見ているのも楽しかったが、こわばった顔のほうが見ていて飽きなかった。
あらゆる意味の満腹感を感じつつ、書類の整理をした。
彼はまた2時間後にここに来ると思うと、胸が高鳴った。
契約。
素敵な響きだ。
12時ジャスト。彼は戸をたたく。
「入れ。」
入ってきた彼の姿に驚いた。何たる対策。
ボディースーツ着用…、防弾チョッキですか?あの、どうしてそんなものを着てるのですか?
そして、その可愛い顔を隠す大きな布はなんですか?フルフェイスのマスクですか?
足元から世界が崩れかけた。
「これで、どうにかできるならしてみろ!」
…脱力。
…完敗。
「負けたよ。何もしないから、脱いでおいで。それでは寝にくいだろ。」
そういうと、軽快な足取りで部屋に戻っていった。
自分が可哀想になった。いや、しかし私に抱かれ殺されてしまった彼女たちのことを思うと、罰を与えられているような錯覚を覚えた。
NEXT>>
|