呆気。
いや、確かにはしゃいでたかもしれないが、大の大人に向かって、15の男の子が…。正直ショックを受けた。


私が大人しく席に着くと、ため息交じりでこちらをにらみつけた。
呆れ半分といったところか。
「多分、うちの国にいるんじゃない?こんなでかいのは流石に屋敷には入らないし、テロリストだかなんだか知らないけど、うちの国で待機しててそのままとんぼ返りするこの機体に乗り込むんだと思うよ。」
真剣な金色の瞳に吸い込まれそうになる。
「どうして、そんなことが?」
「これだよ。見たことがある形状の部品でさ、さっきので合点がいった。これ、俺が作った特注品だよ。結構最近作ったものだと思うから、国外へ出て増産されてるとは思えない。」
「君は爆弾まで作っていたのか?」
「オレ、BGとか、そういう仕ご…って、そうじゃなくて。」
呆れて怒った顔もまた可愛いと見とれてしまった。
「操縦席を乗っ取って、この機体を宮殿にドーン!とか。そういう類じゃない?俺の作った爆弾をたんまり乗せてさ。」
ここで、ふと疑問点。
いくら頭が良くても、推理にしては出来すぎているし、自信もありげだ。
そんな顔も可愛いと思ってしまう自分が情けなくなってくるが…
「君はいくつこの爆弾を作ったのかな?」
「10個。」
てへっと舌を出す。悩殺的なその表情に、心臓が大きな音を立てたが、そんなことを言ってられない。
「最初の試作、急いで欲しいって言うから部品なくってさ、継ぎ足しで作って、この破片元オレの目覚まし時計なんだ。」
ああ、かわいい。
これ以上ないくらい可愛い。可愛い以外に彼を表現する手段を私は持ち合わせておらず、(詩人だったら良かったのに…)可愛いと思うほか無かった。
「で、威力はどれくらいあるのかい?」
「ジェット機の爆破は試作の爆弾1個。」
「それって、ものすごく威力があるということですか?」
「そうですね。」


さて、どうしようか。
このまま国王のところへ戻るのが先決か。
空港の警備を強化してもらって、不審者・不審物を洗いざらい調べる方がことを荒立てないで済むか。
「このまま帰ろう。そのかわり、空港へ連絡するぞ。」
「得策。」


国王専用ジェット機に乗る際、彼の進言で燃料タンクから操縦席のパネル裏まで徹底的に調べ上げた。
自家用ジェットが爆破されたんだ。それくらい当然なわけだが…。
国王はえらく彼の事が(国王は彼女だと思っている)気に入ったらしく、気分を害すことなくそれに応じた。
不審な点も無く今に至るのだが、帰りは当然操縦士だけとなる。
警備不足もいいところだ。


到着した頃、修羅場真っ盛りだった。
何に失敗したか、身体に例の爆弾をまきつけた男2人が大声で何かを言っている。
ここからではわからないが、どうせ事がばれたことによる逆上が関の山。
降りようとする私を制して、エドが嬉々とした顔で降りていく。
「アンタはそこでじっとしてな。」
扉が閉められる。
確かに安全だが、外にいるときは常にそばにいるようにって話ではなかったのかい?


おとなしく、元いた席に戻る。
丁度窓から、テロリストの姿が見えた。
腰に巻いた爆弾が不恰好だなと彼らの姿を確認した瞬間、爆弾が視界から消えた。
と同時に、金色が目にも留まらぬ速さで2人を倒して行った。
あざやか。
思わず拍手をする。
前の席でほぼ同じ光景を見ていた執事も拍手。
そして、ばつが悪そうに咳払いをした。
「ご主人様をほっておいて、けしからん。」
「いいではないか。ここ数日、退屈だったんだろう。」
鮮やかな立ち振る舞いに、BGとしての信頼を見出したが、少々先行きは不安であった。


彼と合流すると、手には爆弾。こっちで処理すると無理を言ったらしい。
「だって、俺が作ったものだし。爆破してない状態で解析されたら、困るんだよ。それに、オレ以外がそう易々と解体できないし。」
「なるほど。」
「それよりも、主人をほったらかして何をしているんだね。」
突然ばつが悪そうな顔をする。
当然だ。主人として言うことは言わねばならない。
「だって、あのままじゃ、空港ごと爆破とかありえたし、オレの作った10個全部腰に巻いてたみたいだし、ジェット機の中にいれば安全かなと。それに、…」
ちらっと上目遣いにこちらを見る。
なんでも許したくなる顔だ。
ああ、可愛い。可愛いんですけれど、どうしたらいいんですか?
「それに?」
「オレの実力、というか、そういうの確認しておいて欲しかったんだよ。確かにここのところ暇で暴れたかったけどさ、どうもあんた、オレのことをBGとしてキチンと認識していない気がしたんだよ。」
それは失礼。
仕方ないじゃないか。ただ君に会いたかったんだ。
BGを雇ったんじゃなくて、君だから側にいてほしいと…。
言い訳じみた感情がこみ上げてくる。情けない大人だ。
「実力がないなら、雇ったりいたしません。任務を遂行することだけお考えなさい。」
空気を割ってはいる厳しい台詞。
「すみません。以後気をつけます。執事さん。」
彼は、執事の言うことは割りと素直に聞くらしい。
唯一、私の事情を全て知っている使用人だ。
彼を採用した理由も経緯も知っている。
当然、勘違いも彼に抱く気持ちも全て知っている。
彼の採用を許可したのも彼だ。


…?


釈然としない点があるように思えた。


「ですから、坊ちゃまわたくしは、あなた様が幸せである道を選択したいのです。もし、間違った道であろうとそれがあなた様の幸せならば、わたくしは命を投げ出す覚悟でございます。」
「わたくしは、うれしいのでございますよ。5年前のあの事件から、あなた様は全てに興味を失われたように見えました。ですから、今回の件は全てがうれしいのでございます。何かに興味を持たれた。」
「ご安心下さい。彼がここから出たいと思わないように全力でサポートいたします。わたくしにとっても彼は救いなのです。あなた様に人としての心を思い出させてくれました。だから、殺したくは無いのです。」


ふと思ったことに対しての返答。
こんなにも思われていたことによる安堵と、やはり彼も例外ではないという恐怖を覚えた。


今日もまた12時ジャストにノックする音がする。
「入れ。」と静かに言うと、真っ赤な顔をして立っていた。
熱でもあるのかと危ぶんだが、そうではないらしい。
扉を後ろ手で閉めたきり、その場所から動こうとしない。


しばらくの沈黙。
沈黙を破ったのは彼だった。


「あのさ、お願いされてもいいよ。」


彼が来て5日目のことだった。







第3話
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