オレの得意分野のひとつとして配線がある。
爆弾なんかを作るときは芸術的な配線で組み上げる。
複雑すぎても簡素すぎてもいけない。
色も複雑に使う。
オレは天才だと、思っていた。
なんに使われるか興味は無かったし、どうでもよかった。
仕事だったし、趣味と実益を兼ねたすばらしい才能だと思っていた。
行き当たりばったりのオレの爆弾は、図面なんてものはない。
オレの脳の中にしっかりと入ってはいるが、どんな特殊爆弾処理班でも易々とは解体できない。
オレは浮かれていた。
天才なんだと自負していし、優越感に浸りながら、広範囲、高性能、誰にも解体なんか出来ない爆弾を作っていった。
楽しかったんだ。
才能が認められたと、弟の足手まといにならないと。
本当に、それだけだったんだ。
「テルスの業火」、思い出すだけで、吐き気がする。
オレが人を殺すことにためらいを持ち出したのはこの時からだ。
その日は前日の体調の悪さは見事に吹っ飛び、逆に身体が軽いくらいで浮かれていた。
この家の特殊な警備体制に興味があり、配線や警備装置の中身なんかを見事に探ろうと意気込んだ。
BGだ。知る必要がある。
職権乱用さながら、オレは探究心だけで突き進んだ。
厳重に鍵のかけられた部屋や、屋根裏部屋まで探検した。
鍵のかけられた部屋には物々しい本がたくさんあったけど、これと言って興味を引くものは無く、ただ埃とかび臭さにむせた。
屋根裏部屋は宝の山だった。
昔の古い絵とかお皿とか、鞄とかドレスとか。
でも、そんな軽い気持ちで、開けてはいけないものを開けたのか…開けなければいけないものを開けたのか…。
幸せな家族の写真。
あいつの両親なのだとすぐにわかった。
父親の顔はあいつの顔そのままで、もう少し歳をとったら、こんな風になるのかと少し笑った。
「あんたが不幸にした人間、殺してしまった人間なんて些細なもんだよ。」
人の命の重さなんて、量れたものではないけれど、拙い台詞だけど、救いたい一身だった。
オレの言葉なんて、軽い。
オレは自分の罪をまだしっかりと両目を開いて見ることができないのに、口ばっかり。
荒唐無稽のオレの稚拙な言葉は多分届いていない。
守るとか言っておきながら、多分今のオレじゃ救えない。
足りないんだろうなと、あの夢を思い出した。
それでも、あいつは笑うようになった。
執事さんはオレの手を握ってありがとうございますと何度も言った。
何があいつに起こって、何をしたのかは知らないけれど、執事さんはとても喜んでいた。
オレは、手元に戻ってきた研究の続きに没頭した。
もちろん仕事も忘れてはいないけれど、ここはあまりにも平和だった。
黒猫の用心棒
教訓5〜爪とぎはダンボールではなく、壁が好きです。でも、怒られるのですが、やめられません。〜
研究基材が全て戻ってくるまで1ヶ月を要した。
仕方がない。
アンプルや一般人には名称不明な基材なんかが山のようにあるのだ。
とは言っても、簡素な研究基材だ。
ほとんど趣味といって良い。
『昔の研究者が隠した研究を蘇らせる』、一応仕事だ。
期間は無限。報酬は後払い。
(でも、研究材料の費用はしっかりふんだくった。)
しかし、怪しいこの上ない。
依頼元は素性の一切を隠し、、残った研究資料の写しだけ渡したまま、他の情報もくれずだんまりだ。
面白そう。それだけで請け負った。
アルは反対していたが、その頃のオレは仕事もろくに出来ずに、暇な日々を費やしていただけだった。
オレの集めた研究資料のほとんどが書物で、難解な構造式なんかを紐解くのは楽しかった。
知識を得るのは楽しい。
同じ歳の子供が遊んでいるのを見てもなんの感慨もわかなかった。
(別にお高くとまってるとか、見下してるとかそういうのでは決してない!)
歳相応にアルやウィンリィと遊ぶ事だってあったし、行き詰ったり、滞ったりすると、子供らしく憤慨もした。
1度アンプルを全て割って後悔したことがある。部屋を大変なことにしてアルに怒られた。
一応、歳相応なところもあるのだ。
(反抗期万歳)
どこまでやってたかなと、研究書を再読していてあることに気が付いた。
何かに引っかかった。
なんだと、思わず声を漏らしてしまった。
簡単なことだった。
こんな簡単なことに、今まで悩んでいたとは…。
笑いながら、理論を組み上げていく。
そうしているうちに、時間は経ち、ここへ来て2ヶ月が過ぎようとしていた。
「そんなに熱心に何をしているんだね?」
「仕事がひとつ片付いてなくて、持ってきてるんだ。って、こういうの駄目か?」
こいつはよく笑うようになった。
引きつった笑顔とか、付き合い程度の笑いとか、そういうのではない笑いだ。
ただでさえ、キレイな顔つきが優しい空気を纏い始めたため、一層際立っている。
キラキラと光を出しているのではないかと時々思うことがある。
「構わないよ。君にはとても退屈な日々を送らせているしね。」
配線関連の情報を元に、更に強化を加えたこの屋敷は今や無敵のように思う。
屈強な警備体制は感嘆したが、配線系統をやられれば一発でアウトだったこの屋敷。
まぁ、そこまで辿り着くほうが困難なわけだが…
オレの天才的な頭脳で色々といじくったりしたお陰で、何が起こっても大丈夫なのだ。
その作業はとても楽しかったし、毎日真っ黒になったお陰でイズミさんに怒られた。
作業服というのが支給され、それを着てほぼ1日中作業に没頭した。
その間、2度ほど外へ出た。
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