まさかと思った。
この世に存在しているなんて、思っても見なかった。
こいつ興味を持った理由、合点がいく気がした。
非科学的なこと信じるたちじゃないけれど、遺伝子の記憶とか、そういうのだったら納得がいく。
オレ達はどこかで何らかの強い接点を持ち、遺伝子レベルまで刻み込まれた。
だからあんな夢を見たりするわけだ。
遺伝子の記憶。
面白い題材だ。


それにしても、オレは遺伝子レベルで男色家だったのかと大いに落胆した。
だってそうだろ?
無意味にトキメイたり、キス…されて、嫌じゃなかったり。
なんか、むしろそういう行為というか、それが自然なような…。










くろねこ通信※黒猫の用心棒の続きみたいなもの※

第2回 きんねこはただのねこじゃなかった













なんとなく、顔があわせづらかった。


昨日の一件、時間になったオレは無情にも、呆けるあいつを放って帰った。
ちょっと違うな…。
キチンと、バス停まで一緒に行ったし、あいつが乗るのも見届けた。
9時ギリギリで公園に行くと、リザとその彼氏。
長身の金髪。
頭は、あまり良くなさそうだが、人懐っこい笑顔が印象的だ。
「はじめまして、ジャン・ハボックっす。」
「ロイ・マスタングです。」
「今日は、すみませんでした。オレ、ギターやってるんすけど、今日急遽ライブに出れることになりまして。」
ギタリストか…、リザはこういうのが好きなのか。
リザの勝ち誇った、得意げな顔に少しばかり腹が立った。
ギターケースが肩からのぞいている。
その後には、よく手入れをしてあるのだろう、バイクが停まっている。
「いや、構わないよ。」
「だから、この人は気にしないって言ったでしょ?」
「でも、やっぱりさ。」
礼節という言葉がしっかりと身についている、いい奴だと思った。
「へへ、ロイ、この人がジャン。かわいいでしょ。」
そういうリザの言葉に喜んでいるのか、腰の辺りにしっぽが見える気がする。
ああ、納得。
なんとなく犬よろしくだ。
それにしても、彼女に可愛いなんて言われて喜ぶとは、本当にいい奴だ。
「リザにいじめられている様子が目に浮かぶ。」
笑う彼氏を本気で肘鉄食らわせる彼女。
見ていて微笑ましくない。
「可愛がってるのよね?」
「は、はい。」
主従関係か。
腹を押さえつつも笑顔を崩さないその姿勢に、オレの心の中は拍手喝采。


「今度、彼女さんと、ライブ見に来てください。」
「残念ながら、今はいないんだよ。」
「え?じゃあ、さっきキスしてたのは?」
…、
み、みら、見られた!?!?!?
「道の往来で、あんなことする奴だったなんて、初めて知ったわ。」
オレも初めてしたよ!!
ガッテム…。
見られてたんですね。
「…、ジャン、見なかったことにしたほうがいいみたいね。」
「え?」
「これで、貸し借り無しで。」
にやりと笑う、リザ様。
ああ、恐い。


公園から徒歩3分。
というか、マンションに付いている公園と言った方がいいのか?
エレベーターホールに向かうまで、妙な緊張感を持った沈黙が続く。
リザはオレの弱みを握ったと、上機嫌だ。
兎も角、相手がばれていないようなので、ほっとした。
ばれたら一大事だ。
ネタにされて笑われ、指を指され、非難される。
目に見えているのだ。
ショタコン、ホモ、あとなんだ?どちらにせよ、恰好のネタだ。


そんな訳で、顔が合わせずらかったのだが、本日は朝から勢いよく登場。
終始笑顔でオレの隣に座る。
何がそんなに楽しいのだろうか。
「お・は…よ。」
たどたどしい、挨拶。
ああ、これがこいつの緊張というか、顔を合わせづらいときの癖なのだろう。
納得。
「おはよう。」
返事をしただけなのに、一気に沸騰したように赤くなる。
ふいっと、顔を背けられるいじらしさが可愛い。
可愛い。
もう、諦めた。
可愛いと思うんだ。仕方がない。
今すぐその蜂蜜色の絹糸の中に顔をうずめて抱きしめたい衝動に駆られる。


本日は1時間目から体育がある。
HRも早々に終わり、女子共はわらわらと更衣室に向かっていった。
勿論、オレ等男子軍は教室で着替える。
開け放たれたカーテン。
隠すものは…何もないはず。
いや、隣で着替えてる奴は隠せ。
隠してください。
確かに、乳もない。
どう見ても餓鬼だ。
なんだ?この色気というか、なんというか。
研究所に篭りっぱなしの不健康な白い肌は、生唾ごっくんに最適だ。
細い腰は、男のそれとは違う、柔らかな色に見える。
男子の注目を浴びていることに気づきもせず、慣れない集団の中での着替えというものを実践中だ。
なんとなく、意地悪でもしてやろうと、もぞもぞと着替える白い背中を指で突いてみた。
「キャン!」
えーーーーー??
文字にするならばそれが一番近いが、なんとも表現しがたい声を糞餓鬼は発した。
その声は女子のそれと寸分たがわず。
クラスの視線がそれに集中する。
「な、何するんだ馬鹿、手が冷たい!!」
真っ赤になって怒るそれは、何に対して赤くなったのか興味がわいた。
「いや、柔らかそうだなと。」
「う、うっさい。」
更に真っ赤になる。
クラスの男共はこの痴態をただただ傍観し、顔を赤らめた。
いや、こいつ男だし。
そう見えない何かがこいつにはあった。
ヒューズはなにやら、ニヤニヤしながらオレに視線を送った。
「なんだよ。ヒューズ。」
「いや、なにも。」




NEXT>>