「抱きたい。って言いたい。」
「は?」
オレはその場にしゃがみこみ、頭を抱えた。
おいてけぼりにされた顔をのぞくことをしなかったが、きっと困った顔をしているのだろう。
「抱いてしまいたい。」
心臓がバクバク言っている。口から音が漏れてしまいそうだ。
「ロイ…?」
「記憶が欲しい。お前がオレを好きで、オレがお前を好きだったって言う。」
頭に乗せられた手を引っ張って、抱きしめた。
こんなんじゃ足りない。
きつく抱きしめて、体温を共有したとしても虚しい。
きっと、こいつを抱いたとしても、それは変わらないだろうと漠然と感じていても、それでも、確証が欲しい。
「このまま離れてしまったら、ダメになりそうだんだ。お前を思う気持ちが日に増して大きくなって、平静をよそうのもやっとなんだ。」
せきを切ったように、感情が流れ始める。
明るいお別れを言うために来たのに。後腐れがないさよならのために来たのに。
これじゃ、三流恋愛映画のクライマックスと相違ないじゃないか。
「ロイ…、いいよ。」
耳元で、やさしく小さくささやかれたそれに、俺の胸はよりいっそう軋んだ。
鳴りすぎて痛い心臓、掴まれるような痛み。
「オレ、お前に何かしてやりたかったんだ。なにも出来ないままでさよならなんて、正直嫌だったんだ。」
「エド?」
「人肌が恋しくなるときがあるんだ。黙々と研究をしている最中にふと…。でも、本当に恋しいのはお前だっていつも思う。」
やさしく回された腕に力が入る。
「オレも、お前との記憶が欲しい。夢じゃなくて、本当のお前の感覚。」
蜂蜜色の金糸に顔をうずめると、やっぱり甘い匂いがした。
しっとりと赤らんだ首筋も、甘い匂いがする。
細い腕、骨がうっすらと浮いた脇、柔らかい皮膚。
ひとつひとつが愛おしくて、切なくなった。
こいつのからだを感じる全てが最初で最後であるという感覚が、よりいっそう切なくさせた。
「な、なんか言えよ。黙ってるのって、はずい。」
どうしていいのかわからないこいつは、見事にされるがままだ。
「好きだよ。」
「そ!!!そうじゃなくて!」
顔を見ると、茹蛸のように怒っている。
「今の状況で、他にいうことあるのかよ。」
「な、無いけどさ。」
「だろ?好きだから、触ってるんだよ。」
「ぬ、ねけぬけと…」
どうしていいかわからないのはオレも同じで、女のように扱うのが定石と知識はあるのだが、うまく事を運べずにいる。
思い切って、ズボンのベルトに手を掛けてはずす。
お互い上を脱いだ状態でも、異様な感覚にあったが更にというか、よくわからない勢いに乗せた。
ズボンの上からでもわかる男の生理現象が愛おしく感じるのは、後にも先にもこいつにだけだろうと感じつつ、そのうえから優しく撫でた。
体がピクッと反応する。
そのまま擦るとそれに合わせて、体が面白いくらいに反応した。
顔に腕を当てつけて、声を押し殺す様が可愛く思えた。
「ちょ…ま、待て!」
窮屈そうになったズボンから、開放して直に撫でると流石に身を起こして怒鳴りつけてきた。
「だめか?」
「い、いや、ダメとかそういうのじゃなくて、オレばっかりじゃなくて、お前も気持ちよくなれ!」
あ、気持ちはよかったんだ。と安心した。
逆に押し倒される形になって、ガチャガチャとベルトをはずそうとしている。
不器用だなと思っていると、諦めたのかズボンの上から、触ってきた。
「もうちょっとねばれよ。」
「お前がはずせ。オレがさわっといてやるから。」
意味がわからない!!!!
不器用さが愛おしくて、焦燥感が吹っ飛んで、ただただ、おかしくなった。
「笑うな!」
別の意味で顔が茹蛸になっている顔をつねると、エドも笑った。
「お前ばっかり、オレを触っても意味が無いんだよ。オレもお前を覚えていたいんだからな!」
かわいい。
かわいいんだ。
「そうだな。」
そう言いながら、ベルトをはずしてズボンを脱いだ。
「一言言っていいか?」
「なんだ?」
「オレは劣等感を感じている。」
「なんで?」
サイズの違いはさして気にも留めることでもないと思う。
基本的な身長から大きく違うし、年齢も違う。
お互いを凝視しながら顔を険しくさせるその顔は、糞餓鬼に戻っていた。
「大きなお世話かもしれないが、し…
腹に衝撃…禁句でした。申し訳ない。
「いい。気にしない。これでオレは2度と忘れない。腹が立ったからな。」
「ちょっと待て、お前オレの存在をこれにする気か?」
「い、いや、違う、そうだけど…そうじゃない!!」
何をやっているんだろうか。
「もう、だまれよ。」
これ以上馬鹿なことをしていると、何度目かの未遂に終わると気づき、強制執行に及んだ。
お互いをすり合わせ、熱を感じあった。
手を握り合い、擦りあい、ただ感じることとに集中した。
「オレ…、この熱さを忘れないから。」
放った熱に息を切らせながら、ぽつりと言った一言がまた胸を軋ませた。
「ここまでやっといて、なんなんだがこの先も大丈夫か?」
わかってはいたがクエスチョンマークを散らばせた顔をこちらに向けている。
「まだ、何かあんのか?」
やっぱり、これで終わりだと思っていたのかと思うと、流石世間知らずの研究オタクと感嘆した。
口で言うよりも行動した方がわかってもらえると感じたので、お互いの熱をまとった指をそこへ持っていく。
「ここ。」
一瞬赤くなった顔が青ざめていくのがわかった。
「そこは、排泄器官だぞ。」
時間をおいてやっとふりしぼった言葉は、期待通りでここからどう説明しようかと思案した。
「男同士はここでやるんだが。」
「お…お前の、そんなでかいの入れたら、オレは確実に痔になる!!」
ムードのかけらも無い!!
「まぁ、ついてるもんがついてて、ついてないもんがついてないからな。」
ため息半分に顔を眺める。
悩んでる。悩んでるな。
「オレが…
「それは却下。」
「何でだよ!オレが入れた方がけが人を出す心配が無いだろ!?」
「お前はオレに突っ込みたいのか??」
ああ、おれ自身すら、ムードもへったくれもない。
「慣らすから、大丈夫だよ。」
問答無用で、伸ばしたままの指で入り口をまさぐった。
反応した体の勢いで、しがみつかれたがこのほうがほぐしやすいと、そのままにした。
耳元で声を押し殺す反応が感じられて、それだけで若さゆえに暴走してしまいそうだったがそうしてしまうと、こいつを切れ痔にしてしまうと、どうにか理性で押さえつけた。
「もう1本増やすぞ。」
「お、おう。」
体育会系の掛け声だが、恐がってるのが直にわかる。
でもエドは、嫌がらずに受け入れてくれている。
どうして、オレ達は離れなければいけないのだろうか。
どうして、オレ達は一つになってしまえないのだろうか。
オレ達は、手探りしながらお互いを確かめ合った。
しっかりと手をつないで、離れることのないように。
苦痛にゆがめる顔、目じりに溜まる涙。
熱い…
「エド…」
「うる…さい、こ…っちみんな!」
小さく、口から漏れる吐息。
つながっている体が、安堵感と焦燥感を生んでいる。
「かわいい。はじめて、見たときから…かわいいって、思ったんだ。」
教室に入ってきた時のエドを思い出す。
その時は、本当にただの糞餓鬼だと思っていたのにな。
「お、お前、馬鹿にしてんのかよぉ。」
「お前に会えるのをずっと待ってたんだ。なのに…。」
「言うなよ。今は、今のオレだけ見てろ。」
お互いに何度も何度も、キスを交わし、熱を放った。
オレの熱がエドの中で更に熱を持って、衝動をかき立てた。
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