幸せは自分の手で壊すもの。
幸せは私には不釣合い。
幸せになろうとなんてしなければ良かったんだ。
ただ淡々と毎日を過ごせばよかった。
そうすれば、彼を不幸にすることなんてなかったんだ。
そうすれば、彼は幸福の中にいることができたのだ。


彼を愛している。
恐ろしい度に。
彼に殺されたかった。
そうすれば、彼は私を愛していたし、忘れないだろう?
彼を愛しているから、真実を打ち明けた。


彼は私に苦しめといった。
彼は私に後悔しろと言った。
私はなんと幸福か。


工事が終わった知らせは受けていた。
二人で暮らすにはもう分ない広さだ。
菜園もできる。
彼は私を守り、私は彼を守る。


引継ぎというものはまったく持って面倒くさかった。
経営を譲るといった相手からははじめは怪訝な声出されたが、事の次第を話すと歓迎してくれた。
事業の拡散。
手っ取り早くどこかに吸収されてみようかとも思ったが、それでは困る人間も大勢出るため、こそこそと分配した。
ルイ8世は泣く泣く了承してくれた。
マスタングの後ろ盾が無くとも、この国は大丈夫だろう。
改めてマスタングの名の広さに驚いた。
そして、それを自分の代で終わらせることを先代方の肖像画の前で謝罪した。


私たちは毎夜、新しい生活のことについて話し合い、身体を重ねあった。
庭師にもらった種の育て方を勉強していると彼は楽しそうに話した。










黒猫の用心棒

教訓8〜外に出るのは確かに恐いですね。やっぱり家の中が一番です。〜














「荷物これでいいのか?」
運転手に最後まで仕事をさせてしまってすまないねというと、とんでもございませんと返ってきた。
「ああ。それで全部だ。」
「以外に少ないな。」
「まぁ、そんなもんだろう。君こそ、それだけで良いのかい?」
「任せてくれ、こう見えても、装備はばっちりだ!」


私たちは隠れることにした。
誰もいない土地で。
誰に合うこともなく。


数日前、彼は仔細を告げに弟の元を訪れた。
弟は激怒したらしい。
額に傷を作って返ってきた。
しかし、それは弟がつけた傷ではなく、彼の幼馴染がつけたものだと言った。
「大丈夫だって。なんたってBG排出会社だぜ?」
もう2度と会うことはないだろう。
それでも、彼は私と共に生きることを選んでくれた。
「あんた、マジで死にそうだもん。」
そう言って彼は屈託なく笑った。


「荷物、全部積んだからな!」
大抵のものは用意してあるから、後は簡単な荷物ばかりだ。
走る車の中で、これからのことを話し合った。
「だいたい、あんた生活感ないからな。」
そういう彼に私はうなずく。
国境を越えたところで、私たちは運転手と別れた。
長い間ご苦労というと、鼻をすすりながらお礼を述べられた。
私たちはバスというものを乗り継ぎ、向かった。
ゆうに10時間は歩いただろう。
彼は私に計画性が無いと罵声を浴びせ、たどり着いた時には夜も更けていた。


街を過ぎる前に私は手紙を書いた。
うろ覚えだったので、届くかどうかはわからなかった。
素人暗号でこれから私たちの住む住所も記載した。
彼はきっと喜んでくれるに違いない。
私はそう祈って、初めて手紙というものを出した。


「ここって、前に来たところ…」
草原の端にひとつ小さな家が建っていることを覗けば、あの日のままだ。
家はこじんまりとシンプルに。
生活用品1式と当面の食料とはいっても、缶詰とレトルト食品あと、ミネラルウォーター。
家の側には菜園。


「ここが、母の森だよ。」
そういうと、彼は疲れを知らない身体で走りだした。
「この森に、湖の女神とか、妖精とか、ドワーフとか、水密灯とかあるのかー?」
遠くで叫ぶ。
「そうだよ。落ち着いたら見てまわろうか。」
ずっとここで、私たちは暮らすのだ。
惜しむ時間も無く。
春には一面花が咲く。
夏は虫の声に寝不足になるだろうか?
秋には落ち葉を集めてマシュマロを焼こうか。
冬には暖炉の側で彼の好きなチョコレートを飲もう。
「ロイー!あんた、今、すんごく幸せそうだ。」
彼が初めて呼んだ私の名前に酷く感動した。
そして、私は全身から振り絞って大きな声を出す。
「幸せだよ。」


私たちの新しい生活が始まった。
私は自分でお茶を入れることから覚えた。
あきれる彼にお茶を出すと不味いと返ってきた。
「オレも、料理はほとんどできないから、期待はするなよ。」
「期待してます。」
「だから!!」
掃除も覚えなくてはいけないね。
植物の育て方も。
洗濯もか。
今までやったことのない世界が広がる。


私たちの幸せに満ち足りた日々が始まった。


朝起きて、彼にキスをした。
彼はおはようと言ってまた寝たので、耳に息を吹きかけた。
頬を軽く殴り、彼は怒っている。
「耳はやめろ。」
「はいはい。」
朝食は珈琲とパン。
自分で珈琲を立てるのは初めてで、火を起こすところから彼に習った。
「自給自足って意味わかってねぇだろ。」
「初心者なんだ。甘く見てくれ。」
ま、いいけどね。と照れくさそうに笑った。
手のかかる恋人で申し訳ない。
覚えることが山ほどある。
それはとても楽しみだった。


早速彼は種を植えている。
私は、部屋の中で荷物を解いた。
母の宝箱は悩んだが、持って来た。
処分するには惜しかった。
それを暖炉の上に飾る。
服も、ここで暮らすようにと用意してあるので、荷物という荷物は無い。
足りないものがあれば、10時間かけて街まで歩こう。
馬を飼うのも良いかもしれない。


「なぁ、オレ、鶏飼いたい。」
「そうだね。卵があれば、また一味違うだろうな。」
料理の本を何冊か用意していた。
昼からじゅう、この料理はここじゃ無理だとか、これなら作れそうだと話している。
「パンぐらいは作れるようにならないと、いけないよなぁ。」
まずは窯の使い方をと、彼は意気込んでいる。
他愛もない会話がうれしかった。
「野菜ができるまでどれくらい掛かるかな?」
「さてね。はじめから実をつけるかな?」
楽しかった。
幸せだった。


風呂を焚くのも一仕事だ。
薪は当面心配は要らないようだが、水を汲むのが大変だった。
飲み水の分は蓄えがしっかりあったが、それを使うわけにもいかず、二人で笑いながら水を運んで風呂を焚いた。
意外な重労働で、お互い笑いあった。
苦労した甲斐もあってか、とても気持ちが良かった。


ここへ来て初めてキスをした。
お互い抱き合って、笑って、これから先の生活を喜んだ。
そして、苦しみ後悔した。
安穏とした生活が彼の本当の幸せなのか?
彼の一族を破滅へおいやり、その罪はこうして安穏としている。
私は彼を幸福にできるのか?
毎夜同じ疑問がよぎる。


森の中私は誰かに手を引かれている。
明るい月夜だ。
この森で月を見るのは生まれて初めてだった。
誰が手を引いてくれているのかわからないが、私は知っている気がした。
そして、ずっとずっと二人で歩いた。


珈琲を立てる匂いで目覚めたのか彼は大あくびをしながら起きてきた。
彼は野菜ジュース。
後数日分でなくなるが、自分でそのうち作ると言っている。
外は晴れている。
昨日の残り湯で彼は洗濯をし、干している。
白いエプロンは拒まれたが、どうしてもというと照れながら付けてくれた。
風になびく洗濯物が気持ちよさそうだった。


何と言う幸せか。
何と言う幸せか。


明日も、あさっても、この先ずっと彼と…







































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































エド、愛しているよ。


































この世の誰よりも君を愛しているよ。
君が愛してくれて、私が君を愛して、とても私は幸せだ。









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2007/04/11up

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